ちょうどAGの発売時期にロングキャンペーンを開始したので、魔法文明の朽ち損ないをテーマにシナリオを組んでみました。
とはいえ、AG及びイスカイア博物誌は現代ラクシアへの反映はあまり考慮されていないため、関係の公式リプレイ辺りも鑑みた上で、現代ラクシアで魔法文明の遺産を扱う際の考察をしてみます。
とはいえ、追加技能やアイテムなんかはどうにでもなります。問題は“貴族”の支配です。
ここを曖昧にするとゲームの崩壊を招きかねないので、ちょっと真面目にやります。
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前提
●PCは原則として“平民”である。
●ルーンフォーク、グラスランナー、フィー、センティアンは、必ず“士族”である。
●“貴族”の支配は人族・蛮族に及び、生殺与奪すら“貴族”に一任される。
※アリストクラシー技能では人族・蛮族以外にも動物や幻獣、魔法生物などを支配することが可能だが、それ用の特別な技能習得が必要となる。元々の“貴族”の支配領域は「ヒト(平民)」のみといえる。
現代に生きる『貴族』
AGを読んだ限りでは現代ラクシアに於いて“貴族”は存在しないと解釈できますが、公式リプレイ「ドラゴンスレイヤーズ3-神ならざる者に捧ぐ鎮魂歌-(以下、D3)」によると、現代ラクシアにおいても、“貴族”の血は残っており、データ的な意味を持ちます。
現代の『貴族』の支配には、他者を操る力がありません。できるのは他の“貴族”の支配を受け付けなくすることだけです。
故に現代『貴族』による支配は、過去の“貴族”が登場しない限りは何も影響しないものといえます。
“貴族”が支配を行うときの処理
D3.P246~の処理を参考にします。
動作:主動作
射程:視線の届く範囲(複数対象可)
判定:冒険者Lv+知力B
目線を合わせることで発動しますが、彼我数メートルなら直接目を見ずとも支配を行使できます(AG.P112)。
支配への抵抗手段
●超越者または、魔物レベルが相手以上の求道者は、精神抵抗判定が可能。
●『貴族』、“貴族”、“士族”は自動的に支配を無効化する。
●『貴族』、“貴族”の支配下にあるキャラクターは、自動的に支配を無効化する。
●その他、支配を無効化するオリジナルのアイテムや魔法をGMが作成する。
超越者または求道者~のところはD3.P257に記載がありました。
AGおよびイスカイア博物誌には無かったはず…。たぶん。
現代ラクシアに“貴族”が存在することは在り得るか
では、データ及び世界観的に、現代のラクシアに“貴族”が存在する可能性があるかどうかを考察します。
魔動機文明期以降の生まれでは“貴族”になることはない
現代『貴族』がデータとして存在する以上、現代まで脈々と高貴なる値を引き継いできた一族であっても、現代『貴族』が限界であると思われます。
もちろん、ファンタジーにはつきものの「隔世遺伝」というワードも考慮すべきですが…。
数千年単位での過去のことなので、さすがに普通の由緒正しい王族に突如として“貴族”が、というのはさすがに無理があるでしょう。
発掘されたハイマン、3000年以上を生き延びたノーブルエルフは「アリ」
ハイマンがラクシアに復活したのは、魔法文明期にコールドスリープされていたものが発掘されたからです。
眠っていたハイマンの中に“貴族”がいた場合、時を越えて現代ラクシアに君臨することができるでしょう。
ハイマンに限らず、当時のラクシアには生命を数千年、休眠状態にする技術が存在していたわけですから、これによって魔法文明期に眠りにつき、現代に“貴族”が甦ることは、現代ラクシアに再び“貴族”が降り立つには最も可能性のある手段ではないかと考えます。
そして、そのように甦った彼らの近い子孫が“貴族”として生まれる、というのもあり得るでしょう。
ただし、これについては魔法文明末期の“貴族”出生率の低下の原因が神的なものでないと解釈する必要があります。公式のアンサーが無いため、GMの解釈に一任される部分です。
また、寿命の存在しないノーブルエルフ、ナイトメアが動乱と貴族熱を乗り越え魔法文明の終わりを生き延び、更にその後3000年以上を生き続けて現代に至った場合。
先の説と比較すると確率的には極小だと思われますが、それでも現代に“貴族”が生きている可能性としては「アリ」でしょう。
あとは、魔法文明末期を生き延びたノーブルエルフの子孫も考慮すべきでしょうか。
とはいえ、無限の寿命を持つがゆえに出生率の低いノーブルエルフ。確実にノーブルエルフを残すにはノーブルエルフ同士の交配が必要になることを踏まえると、「子孫が生きていた」の方が「当人が生きていた」よりも確率は低くなると思われます。
一方、蛮族側の長命種族については、蛮族は“貴族”の血を保護しようとしなかったこと、蛮族を代表する長命種族であるドレイク、バジリスクの寿命が無限でない(ドレイクは書籍によっては寿命が無いように書かれているが、有限とする書籍では1000年程度とされている)ため、通常の手段で生き延びている線は考えなくて良いでしょう。
現代ラクシアで貴族熱は考慮すべきか
“貴族”を滅ぼす要因となった、貴族熱。これを現代ラクシアで考慮する必要はあるでしょうか。
結論から述べると、「無い」と思われます。
この考察の争点になるのは、貴族熱は「病気」か、「呪い」かという点です。
当時の人族は貴族熱を「呪い」と結論付けましたが(AG.P122)、“貴族”の保存を求めなかった蛮族側の貴族には貴族熱が流行しなかった(AG.P125)ことから、貴族熱は近親交配による種の劣化が招いたパンデミックであり、それが偶々、病気には強かったノーブルエルフに直撃するものであったと解釈するのが自然です。
然らば、“貴族”以外には感染しない貴族熱ウイルスが、3000年の時を経て現代ラクシアにそのまま存在しているというのは現実的ではありません。貴族熱は媒体の全滅により、共倒れしたと考えるべきでしょう。
実は“貴族”以外にも感染し永らえている可能性は無きにしも非ずですが、なにせ3000年経っていますからね。
盛大に変質でもしてなきゃ、それこそ「呪い」のウイルスです。
敢えて貴族熱を「呪い」と解釈する場合、その影響が人族のみに収まったということは、“貴族”による横暴に憤ったライフォスによる制裁…。そういう線が無いわけではないです。この辺はGMの解釈次第ですかね。
この場合、魔法文明末期の“貴族”出生率低下、『貴族』への弱体化なども神の思し召しと解釈するのが妥当となるため、現代ラクシアに“貴族”が君臨することは未来永劫無い、と言い切ってしまって良いでしょう。
また、貴族熱を病気と捉えた上で、現代ラクシアで貴族熱に罹る可能性として、先に述べた、休眠状態からの覚醒という形で“貴族”が復活した場合があります。その“貴族”が眠りについた時期にもよりますが、魔法文明末期の者であるならば、既に罹患者である可能性はかなり高いです。儚い命です。
そして罹患者が一人でもいれば、ここから貴族熱が再流行する可能性もあります。ヒェッ。
寿命のない種族といえばヴァンパイアがいるけど…
そういえば、蛮族側にも数千年の時を超え得る連中がいましたね。
こいつらも立ち居振る舞いはまさに「貴族」ですが、データ的には“貴族”なのか“平民”なのか…。
これについては、原則として“貴族”がアンデッド化した場合“貴族”の力を失う(AG.P125)ことが判断基準とできます。
ヴァンパイアもまた、血族に迎え入れられることで生来の種族の特徴を失うものなので、アンデッドと同じく、ヴァンパイアになった時点で“貴族”の力は失われると判断できます。
但し、これは同時に“平民”でも無くなるといえます。よって、ヴァンパイアは“貴族”にはならず、“貴族”の支配も通じない存在とすべきでしょう。
現代に“貴族”を登場させる場合のマスタリング留意点
当然ですが、PCたちに支配への対抗手段を与えなければなりません。
例え超越者セッションであっても、一度失敗すれば“貴族”が死亡するまで支配下に置かれるリスキーな抵抗判定を前提とすることは、あまりに危険です。
また、敵対する“貴族”と協力者の“貴族”という対立図にすることもできますが、支配の絶対性はPLへの不安やストレスになりかねません。協力者は現代『貴族』とする方が無難でしょう。
余談
何度AGを読み返しても、フロウライトが“士族”専用種族だという記載が見当たらなくて釈然としないんだ…。
血も無けりゃ交配もしないフロウライトは“士族”のみか、“士族”or“平民”の種族だと…思うんだけどなぁ。
ex.秘奥魔法を現代ラクシアに登場させられるか
貴族に対して一通りの結論が出たので、オマケの考察。
結論だけ述べるなら「GM次第」で終了なのですが、もーちょっと突っ込んでみよう。
まず、秘奥魔法は「暗号や秘められた文字で書かれるため、秘術士は他者の〈魔導書〉を用いて秘奥魔法を行使することはできません」(AG.P36)。
技能持ちですら他者の〈魔導書〉は使用できないのですから、通常は〈魔導書〉が遺跡などから発掘された場合、それを利用することは不可能でしょう。
もしも〈魔導書〉を解読させたい場合、意図的に暗号化を行わずに作られた、特殊な〈魔導書〉であったり、子ども用の手習い的な〈魔導書〉だったりすることはあり得ます。
そして解読を行う場合、秘奥魔法は真言魔法や操霊魔法と根源を同じくするものなので、深智魔法の使い手ならワンチャンある…でしょうか。
ともかく、秘奥魔法を伝承するキャラクターがいる場合は別ですが、一般論として、〈魔導書〉を解読して秘奥魔法を使うことはできない。
これを可能としたいなら、それなりの理由づけが必要。解読者に深智魔法のスキルはほぼ必須。
という感じでしょうか。