ど素人から毛を生やす。<延>

個人的レビュー:テイルズオブベルセリア

Game,Tale > ゲーム 2016年10月11日(最終更新:1年前)

どもです。

前作のTOZのレビューを書いたので、続編のベルセリアも書いておこうかと思いました。
当たり前ですがネタバレ乱舞です。ご注意。

システム:大幅に改善、但し「テイルズらしさ」が行方不明

前作のシステム点での最大の問題点、
「戦闘のカメラワーク」
「ワールドマップなし、マップ間移動の大量ガルド消費」
について、両方に大幅な改善があったことは間違いなく評価すべき項目です。

また、今作の特徴は装備ごとにスキルを設定し、マスターしたものが蓄積されるシステムだと思います。
僕の好むタイプの装備スキル制とは異なるものですし、結局は装備の強化が重要視されるシステムですが、
前作に比べれば「新しい装備を手に入れる喜び」を手に入れることができたかなーと思います。

そして、今作最大の変化はライン戦闘が完全に廃止されたこと。
スターオーシャンシリーズに近い戦闘画面に、前作ゼスティリアのシステムを組み合わせたような感じ。

戦闘バランスの改善や、
前作のような「仲間がいっぱいいるのに戦闘メンバーが強制固定」の問題を解決させた一方で、

えっ? これテイルズ??

みたいな感覚は拭えませんでした。
戦闘周りに関しては個人的には、「嫌いじゃないけど何か違う感」がありました。

シナリオ①:復讐譚をRPGに上手く落とし込んだ

正直、落ち目気味のテイルズが復讐の物語をRPGで演出しきることができるとは思っていませんでした。

元々「復讐」などの個人的で負の要素が強いテーマは、
特にゲームでは、プレイヤーがキャラクターに感情移入や共感をすることができず、
プレイヤー置いてきぼりの物語になりがちです。

ですがTOBでは、

① 主人公の幸福だった時期から始まることにより、憎しみや怒りを共有

② 負の感情が共有されている(主人公に否定的になりにくい)間に主人公に外道な行動を起こさせる

③ その後は「目的のためなら何でもやる」姿勢を取りつつ、外道な行動は控えめにする

④「正論だがゲスい敵」と「悪者だが人情的なパーティ」の対立を明確にする

⑤ 主人公の復讐を、復讐達成でない形で終わらせる

⑥ 満を持して登場した黒幕が超性格悪い&敵の所業が正義から逸脱していることが判明する

⑦ 主人公が「悪」である敵と対立し、世界を守る

という形で、悪意をコントロールしつつ復讐譚から勧善懲悪へとシフトさせるに至りました。

やはりRPGというのは「悪い敵をぶっ倒す」ことを目的とできないと不完全燃焼になりますから、
最終的にRPGらしい落としどころに持って行けたことは間違いなく高く評価できる点です。

また、ひとつひとつの「小さな物語」の中に、起承転結・伏線がきちんと用意されており、
「上手いなぁ」と思わせる点も多くありました。

前作のような説明不足による強引さ、
意味の分からない重要キャラクターの死が存在せず、

シナリオライターがちゃんと仕事してるぅ(*'ω'*)

というのが素直な感想です(笑)

シナリオ②:大きな流れに従うことへの危惧・反発・警告

TOBのテーマは「理」と「感情」ということでした。

作中では「理」を「理性」と言い換えるシーンが何度かありましたが、
どちらかというと「効率」や「合理性」が近い感じだと思います。

身勝手な人の「感情」がいかに迷惑なものであるのか。
一方で個人の「感情」を排した「効率的な社会」とはどういったものか。
人間はどちらを許容できるのか。許容すべきなのか。

これを問うた物語となっているのですが、同時に、

「世論・世の中の流れを疑わず、盲目的に従うことへの反発や警告」

を強く感じました。

救世主への盲目的な信頼が人間滅亡の危機を招いたり、
噂の一人歩きや、意図的な操作によって歪んでいく情報を冷たい目で眺めたり、
流され易い人々への皮肉が多分に含まれていたように思います。

「理」と「感情」と、どうやって向き合っていくのか。
この答えは一様ではなく、プレイヤー自身が折り合いをつけるものである感じですが、一方で、疑わず流れていく者を強く否定している。

捻くれた見方をするなら、実はそっちが本当のメッセージなのでは?
と思ってしまったり( *´艸`)

生々しい「人間らしさ」をあらゆる手段で描く

TOBの高く評価できるポイントのひとつが、
生々しいまでの「人間らしさ」を表現しにかかったことです。

主人公たちの仲間に増えていく、元人間の化け物。
人の姿をしていないからこそ、余計に人間らしさが際立つ。人間に見える。

というシナリオ的な点もそうなのですが、
個人的には演出技術の高さに目を向けたい。

例えば、TOBは3Dグラフィックを進化させつつも、圧倒的にチャット形式の会話シーンが多い。
そして、チャットでは表情パターンだけでなく、ポーズのパターンが凄く多い。
現状、バンナムの3D技術はイラストで見せられる表情の多彩さにはまだ及んでいないので、
敢えてイラストで喋らせることによって、表情や仕草による言外の台詞を表現できています。

また、言外という点では終盤のイベント、特等たちの最期。
僕はここのイベント2つがTOBでトップクラスに好きです。特にメルキオル。
敢えて言葉で語らず、キャラの動きとカメラワークだけで、
「さんざん理を説いた敵が自身の感情に命運を左右される」
「如何に理論武装しようと、敵の行動は結局自身のエゴによるものである」
という点を演出しきりました。
ここについては純粋に感服。スタンディングオベーション。

エンディングの問題点

なんか、冗長だったなぁ、と。
折角良い感じの物語だったのに、ちょっとテンション下がる(-""-)

で、この原因が2点あったと思われます。

ゼスティリアに繋げるエンディングでなければならなかった

TOZの前日談であるために、「聖主マオテラスの誕生」がエンディングに必須だった。
しかし、TOBの主人公はあくまでベルベットであるため、
主人公であるベルベットを失った後もエンディングを続けなければならなかった。

物語として、これはあまり良くない。
本来、主人公の結末を描いて物語は終焉。あとは後日談として描くのが順当な書き方です。

ゼスティリアが前提でないのなら、マオテラス誕生のくだりは名言する必要がないのです。
特に新しい名前に関するシーンなんて、完全に蛇足です。

EDムービーの中で、もっと言えばスタッフロールの中で、
ライフィセットが聖主に姿を転じるシーン、銀の炎で世界を浄化するシーンを描けば充分だった。

物語に主人公を置く場合、あくまで物語は主人公に沿うものであることを忘れると、
冗長なエンディングに導いてしまうようです。

エンディングに要素を詰め込み過ぎた

エンディングに意外性は要らないっていうのが、僕の主義です。
なぜなら、エンディングは全ての伏線を回収すべき場であるからです。

歴代テイルズで例示してみると、

TOD2
〇エンディング・神を倒したことでヒロインが消えてしまう。
・それだけでなく、神が改変した歴史が全て元通りになってしまった。
・旅の記憶を無くした主人公たち。しかしなんとなくだが仲間のことが脳裏にちらつく日々。
・新しい旅に出た主人公。なんとなく足が向かう「ヒロインとの出会いの場所」。
・起こるハズの無い奇跡。ヒロインとの再会。
●エンディングに向かう伏線
・神を倒せばヒロインが消えてしまうと知り悩み苦しむ主人公
・「ヒロインとの出会いの場所」で、ヒロイン自身の説得を受け心を決める。
・起こるハズのない奇跡を願いながら、二人は抱きしめ合う。
・そのとき、光り輝き空に消える、ヒロインの「願いを叶えるペンダント」。

エンディングの奇跡は、ヒロインのペンダントが叶えた二人の願いだった。

というように、
・ラスボスを倒した後、何が起きるか を事前に知っている
・エンディングで起きる事象には全て本編の中に伏線がある
のが理想です。

一方、ベルセリアの場合、

〇エンディング
・導師アルトリウスを討つ
・聖主カノヌシをベルベット自身の犠牲で封印する
・聖主の一柱を失っては世界が破滅すると知らされる
・ライフィセットが新たな聖主になることを決意する
・聖主の力を得たライフィセットが銀の炎で世界を浄化する
・ライフィセットが従来の姿を失い、銀の竜となる
●エンディングに向かう伏線
・アルトリウス討伐はベルベットの物語を通しての目的
・カノヌシを討てば、ベルベットやライフィセットたちは死んでしまうことが推測される
・最終決戦へ向かう道のりで「何か」に気づいたベルベットは一人でカノヌシ対策への決意をする
・ライフィセットの銀の炎は、穢れを浄化する力を持っている

…エンディングの要素の多さに比べて、伏線が少なすぎる。

ライフィセットが聖主となる伏線が全く張られていないのが一番の問題です。

また、ベルベットのカノヌシ対策の内容がエンディングまで秘められていましたが、そんな必要もない。
これのせいでエンディングの会話シーンが無駄に増えてしまい、冗長さを助長した感じがあります。

上述の内容を踏まえ、冗長でないエンディングにするには

元々エンディングに要素を入れすぎだと思うのですが、
エンディングの要素が減らせないとして、考えてみます。

●エンディングの前に済ませておくべきイベント
・カノヌシを封印ないし討伐すれば世界がどうなるのか知っておく
・ライフィセットが新しい聖主になることを決意する
・ライフィセットが聖主の力を得ることで、世界の浄化ができる推測を立てる
・ライフィセットが聖主となったとき、マオテラスと名を変えることを臭わせておく
・ベルベットのカノヌシ対策の内容を明らかにする(少なくともフィー以外は知っておく)

これだけできれば、エンディングの描写をかなり省略できます。
そして、ライフィセットが聖主になった後のイベントを前倒しすることで、
ベルベットのラストシーンからそのままエンディングに繋げることができます。

折角良いストーリーだったので、この辺徹底して欲しかったなぁ。

エンディングの不満点に関する余談(追記部)

この話、専門用語で「プロットポイント2」というもののルール違反だそうです。

プロットポイント2とは起承転結の転結の間を指し、プロットポイント2を超えたら(「結」が始まったら)、それ以降は新情報を出してはいけない、というものです。

プロットポイント2を超えても新情報を出して許される(物語がダレない)のは、この起承転結が「大きな起承転結の一部」である場合に限られます。
ベルセリアの例で言えば、ベルセリアとゼスティリアの2作品を、ベルセリアを前・ゼスティリアを後とした1つの物語とした場合には許される、ということです。
おそらく、ライターはそのつもりで書いたのでしょう。しかしプレイヤーとしては、ベルセリアはベルセリアという1つの作品として捉えていますので…やっぱり宜しくないなァと思いますね。

自分、今まで経験論と独自考察でシナリオ作りのルールを模索していましたが、こういう先人の積み上げた知識って勉強する価値は絶対にあるなァと思いました。今回の件で。

前作との繋がり:「やっていればより面白い」程度

ゼスティリアの続編ですが、前日談のため、
「ゼスティリアを知っていないと面白くない・わけがわからない」ということは無いです。

ただ、ゼスティリア未プレイだとエンディングに冗長さを感じ易い傾向があるようです。

逆に、ゼスティリア好きの友人としては、
「この場所がゼスティリアではここにあたるのか」
「このキャラ、ベルセリアの頃からいたのか」
「もしかしてこのキャラはあのキャラのご先祖か?」
などと推測してとても楽しむことができたらしいので、

前作をプレイしていれば、より楽しむことができる

というくらいの受け止め方で大丈夫だと思われます。

一方で、
異海探索で巡る島々は全て歴代テイルズがモチーフ、
歴代テイルズのミニゲームが多数復刻している、
歴代テイルズのキャラクターを使ったミニゲームがある、
歴代テイルズの秘奥義をキャラクターが使用する
など、歴代テイルズの要素を多数持ってきており、
本来の20周年記念作品であるゼスティリアよりも記念作品感がありました。なんでや。

総評

システム面でテイルズ臭が薄いのが気になるが、前作とは比較にならない良作品。
このレベルがまだ作れるなら、まだテイルズに期待しても良いのかな。

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